8月3日(水)、トランペットナイトを開催いたしました。
満席のステージ。
その日セッティングした、音楽工房ホールの180席は瞬く間に埋まってしまい、
客席は、心から今日のコンサートを楽しみにしている雰囲気に包まれていました。
照明が落ちて、暗く静まり返ったホールに流れる、静かな低音のピアノの音。
そこにミュートをつけたトランペットの音がやはり低音で重なりました。
高い音はすべて封じ込めたような低音で、最初の曲「霧のなかで」のタイトルそのままの冒頭でした。
トランペットを人の声のように鳴らしたり、ふっとマウスピースを離して肉声で叫んだり、
目が離せないはじまりの一曲でした。
私は、このホールに何回かコンサートを聴きに訪れました。いずれも素晴らしいコンサートでした。
でも、このホールでこんなにも音が震えるのは、なかなか聴けないかもしれません。
ベルワルツさんのトランペットの音色は、吹きこまれた音が私の目の前まで飛んでくるほどの響きで、
ある時はとても悲しげだったり、軽快に刻まれたり、ロングトーンは美しいヴィブラートで鳴らされ、
一曲の終わりは音が途切れるのがわからないほどの美しい余韻でした。
最後の数秒の余韻も待てない観客の一人が思わず拍手してしまったほどの素晴らしさで、
最後のラプソディ・イン・ブルーにたどり着くまでの時間が一瞬で、まさに夢のような第一部でした。
第2部が始まる前の休憩で、観客でいらしていた、浜松トランペットサークルの亀山代表
(トシ・トランペット・アトリエさん)にお話を伺うことができました。
「この二人は対照的です。ベルワルツさんはソリストとしての、ビルジャーさんはフィラデルフィア
オーケストラの団員としての、それぞれの楽しみ方があります。好みはそれぞれなので、
それを踏まえて聴くのも楽しいですよ」なるほど!自身のアトリエで、こちらのチケットを扱っていたほど
今日のコンサートを楽しみにしていた方のご意見は、第2部で即納得させられました。
第2部の冒頭は、先にアカデミー受講生の方に勧められた、ペヌカン作曲「演奏会用小品」。
たしかに、今目をつぶっても浮かんでくるほど印象的なトランペットらしい曲でした。
豊かで明るく、波打つヴィブラートもとても正確なビルジャーさんは、
まさしくオーケストラのトランぺッターとしての堂々とした風格がありました。
とても息が続くとは思えないフレーズもなめらかで、最後の音まで今初めて吹いたような力強さ。
今日、少し聴講させていただいた時に、ちょうどブレスのタイミングを言われていましたが、
まさしくその絶妙なブレスのタイミングがこの素晴らしいロングトーンを作っているのだと思いました。
フリューゲルホルンなども多用されて、観るのも楽しいコンサートでした。
そんな、全くタイプの違う二人のトランペットが一緒に、というのはどうなんだろう、
興味津々で聴いたお互いにメロディを交代で吹く無窮動。この曲は当日変更になったのに、
まさかこんな曲を持ってくるとは、というほどの、聴き比べの曲。
同じメロディを追いかけっこで吹いて、追いかけっこで伴奏をするので、音の違いがはっきりわかりました。
それにしても息がぴったりで、吹いている二人が楽しそうで、これを聴くだけでも価値がある一曲でした。
最後の一曲まで、大拍手の中、二人揃っての大満足の顔まで、とても幸せな美しいコンサートでした。
(この記事は、インターン池川恵子が担当いたしました。)
カテゴリ : 2016/08/04